私の住むマンションには、脚本家で作家の筒井ともみさんも住んでいらっしゃる。普段から親しくさせていただいているので、こんなFAXを送りました。
筒井さま
ご相談がありFAXいたしました。
実は、私の「わた詩100詞」にも載せました
「中野のライオン」という詞なのですが、
これは向田邦子さんをリスペクトして、
彼女のエッセイ集「眠る盃」の中に収められた話を
モチーフに創ったオマージュ作品です。
この作品を世に出したいと思い、詞を改めて書き直し、
私の代理店時代の後輩で、今はプロのピアニストで
作曲家の谷真人氏に作曲してもらい歌ってもらった
デモが出来上がりました。
これを世に出すに当たって、例えば「中野ノライオン」を
ドラマにして、そのエンディング・テーマなどにしたらと考え、
向田邦子賞の審査員もなさっている筒井さんに、ぜひ、
アドバイスをいただければと思いFAXした次第です。
デモのCDは、私の手許にございますので、
お聴きいただいて、あれこれサジェスチョンして
いただければ幸いです。
お忙しいのは重々承知いたしておりますが、
ご都合のよろしい時に、お時間をいただければと
思っております。よろしくお願いいたします。
お返事、お待ちいたしております。
濱田 拝
中野のライオン
作詞:ハマダテツジ
宇宙にロケット旅立って
スプートニク衛星が打ち上がり
夕陽が似合ったあの頃に
粗末な中野のアパートで
男と並んでライオンが
立派なたてがみ 誇らしく
夏の夜空を眺めてた
中野のライオン
中野のライオン
その佇(たたず)まい
それは 夢か 現(うつつ)か
中央線の窓越しに
それを見てた
女がひとりそこにいた
一瞬見えた二階家で
飼い猫みたいに大人しく
夜空眺めているところ
中野のライオン
中野のライオン
女の瞳に
それは 夢か 現か
中野のライオン
中野のライオン
刹那(せつな)の出会い
それは 夢か 現か
夏の夜空にゃ 天の川
街は 暑さに 茹(う)だってた
いて座 さそり座
名もなき庶民(ひと)たちさえも
みんなきらきら光ってた
語り継(つ)がれた ライオンは
やがて夜空で 星になり
昭和が終わる その頃に
いつか星座になったんだ…
夏の星座になったんだ…
中野のライオン
中野のライオン
褪(あ)せない記憶
それは 夢か 現か
中野のライオン
中野のライオン
尽きせぬ思ひ
それは 夢か 現か
夢か 現か…
イラスト:谷真人
NAKANO'S
LION
「中野のライオン」
拝啓!向田邦子さま。
あのライオンは星になり、
昭和は今も光ってる。
<企画意図>
「人生は、死ぬまでプレゼンテーションだ!」これは、決してコリない、なかなかメゲない。そんな団塊生まれの元広告クリエイターが主人公の、なんとも昭和チックな夢追いグラフィティ・ドラマ。当時のヒットソングや、懐かしのCMソングも、色々と登場!
このめげない男、中野幹二は、愛称がナカノッチ。バリバリの昭和歌謡フェチで、テーマソングは、「僕は泣いちっち」(守屋浩)ならぬ「僕はナカノッチ」。肝臓がんという大病を乗り越え、まだまだひと山当てるぞと夢を追い掛け続ける、遅れてきた作詞家(67歳)だ。
脚本家で直木賞作家の向田邦子へのオマージュ作品、「中野のライオン」を歌とアニメーションにして世に出そうと、昔、同じ外資系広告会社に勤めていたクリエイターたちと結託して、そのプロジェクトを成功させるために奮闘する毎日を送っている。
物語は、そんな「中野のライオン」プロジェクトに立ち向かう中野幹二と、その仲間たちの姿を縦軸に、彼の青春時代からこれまでのクリエイター人生を横軸に展開しながら、向田邦子ワールドに突入していくストーリー。
実名の芸能人・文化人(実際にはキャスティングする)も効果的に登場する、面白くってホロリとくる、シニア世代には懐かしく、若い世代にはとっても宝島な、昭和マニア垂涎のスペシャルドラマです。
<主な出演者>
●中野幹二(愛称ナカノッチ)
若い時分は長髪・パンタロン、年を取ったらがん患者。これってケッコー、トレンディ!向田邦子という昭和に向き合っていたら、自分の昭和もこよなく愛しくなってきた。
大学時代、志ん生、文楽、談志、志ん朝に憧れて落語研究会に入るもプロを目指すにはほど遠い実力。同じ頃、五木寛之みたいな小説家になりたくて自費出版したりするも、あえなく挫折。広告業界に入り、今度は糸井重里に負けない一流コピーライターを目指すも、ついに一流にはなれず。そして、コリずに阿久悠みたいな作詞家になろうと一念発起して、現在に至っている。
いつだって、トライ&エラーの連続だが全然めげない。あの松下幸之助翁の「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ、それは成功になる」を噛みしめ、一度はがんで死を覚悟するも、いいや病は気からとばかり、前向きに生への執着を燃やし、笑顔で大きな夢を追い続けるという、クリエイティブ馬鹿な毎日を送っている、愛すべき団塊男なのだ。
●横沢ヒロシ(ピアニスト・作曲家35歳)
外資系広告代理店時代は営業をやっていたが、何を思ったか28歳の時、パリ国際アマチュア・ピアノ・コンクールにチャレンジ。世界の競合がひしめく中で優勝し、遅咲きのクラシック・ピアニストとしてデビュー。今は作曲も手掛けるマルチ音楽アーティスト。
●坂本庸子(ようこ)(家庭英語研究家・著述家48歳)
英語はペラペラ。若い頃、中野幹二の下でコピーライターをやっていたが、主婦の傍ら幼児向け英語本などを執筆・出版している、しっかり女史。向田邦子の大ファン。
●阪本晴美(アニメーション作家20歳)
坂本庸子の娘で、アート系の大学でグラフィックデザインを学ぶ傍ら、アニメーション創りに嵌っている映像おたく娘。中野ブロードウェイをこよなく愛し、この中野ブロードウェイを日本屈指のおたくビルへと変貌させるきっかけを作った「まんだらけ」が大好き。「まんだらけ」とは、漫画古本にはじまり、今ではアニメやゲーム等に関する音楽・映像ソフトや各種おもちゃ、アニメグッズ、同人誌、コスプレ衣装など、あらゆるジャンルのマニア・おたく向け商品を扱っているお店である。
といった私小説風な企画を考え、筒井さんに相談。プロの目からすると、ここからどんな面白いプロットにするかを考えるのは、まずは当然。その上で、もちろん、製作費のこと、出来ればスポンサーも見つける位のことをしないとテレビ局では取り上げてくれないということでした。ひと言で言ってしまえば、世の中、そんな甘いもんじゃないと言うことなのでしょう。
*筒井ともみ オフィシャルBlogへ
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