City
Life 2
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'97年、平成9年1月21日(火)
私は「LuckyStory」の最初の文章を書きはじめていました。この物語は、リアルタイムを記録すると同時に、自分史、あるいは 家族史を語るものでもあるのだから、そこに流れる空気、風のようなものを、いつも大切にしたいという感性が働いていたのです。夢想、空想、想像の中の世界に遊びながら、ゆっくりとパソコンのキーボードを叩いていると、とても静かな気持になってくるのです。
と、その時です。その声は、私の足もとの方から聞こえてきました。 「この頃、とっても精が出るじゃないか」 私はその声の方に振り返った。今年で丸12歳になった愛犬のラッキーが、私をジッと見つめていたのです。 |
「お前か、今の?」 私が尋ねると、「そうだよ」 とラッキーが応えました。「いつから話せるようになったんだ?」「実は、ほんの少し前からさ。最初はママと話そうかとも思ったんだけど、びつくりすると思ってね。パパを選んだのさ。パパのいい加減な性格なら大概のことがあっても大丈夫だという判断でね」「確かに。少し驚きはしたけど、お前なら喋ってもちっともおかしくないもの…」「おいおいママとも話そうかと思ってるけど、まずはパパと舌慣らしと思ってね」ラッキーはそう言うと、いつものように大きな欠伸をひとつしました。本当にこいつ喋り出しやがった。私は心の中で思わずニヤッと微笑みました。 そう、犬だって、家族になると人間なんです。この日から時々、ラッキーは人間、いや、人間ドッグになったのです。 |
「小学唱歌に、犬は喜び庭駆けまわりっていうのがあるけど、雪が降ると犬も嬉しいものなのかね」
と、私がラッキーに聞きました。「そりゃあ、パパの気分といっしょだよ。なんとなく嬉しそうに散歩に出ていくじゃないか…」ラッキーは机の脇のベッドでうつらうつらしながら、面倒臭そうに応えました。 「ところでこの家ってさ」フト、思いついたように私が言った。「風水的に言っても結構よさそうなのよ。いい気というものは気持ちのいいエントランスから入って来るそうなんだ。それに、大きな木があるというのも、とてもいいことのようだしね。家相のことを読んでみて、自分なりに咀嚼してみると、清潔で暮らしやすい間取りなら吉。インテリアに気を使っていて、なんとなくホッとするものがあって、帰って来るとフッと和む。そんな空気感のある家になっているかどうかが、家にはとても大切なんだそうだ。つまり暮らし方っていうのかな、自分の家を愛しているかどうかの問題ってすごく大きくて、愛していると自然に幸運も入りやすくなっていて、いいことが沢山起こるようになってくるらしいよ」「…………」 ラッキーは気持ちよさそうに、大きな鼾をかいていました。人によってはこのラッキーの鼾を聞いて、「ヘェー、犬も鼾をかくんだ」なんて、初めて知ってとても驚く人もいます。 まぁ、犬の鼾を聞きながら、こんなことを書いていられるというは平安そのもの。ホント、ありがたや、ありがたやなのです。 そう、そう、こうしてラッキーは、私たち家族といっしょに気持ちよく齢(よわい)を重ねていったのであります。17年、長いといえば長かったのですが、何かあっという間だったような気もします。結局、ラッキーの晩年は、若い頃覚えたお手すらもせず、自分のしたいように振舞う、勝手気ままなご隠居稼業でした。 そして、そんな彼の最期を見届けた私、パパ・ハマダは、大往生のラッキーに捧げる詞を創ったのであります。 |
Luckyじいちゃん
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