グリーンウッドワーク

  グリーンウッドワーク作家の井丸富夫さんの工房を訪ねてきました。
  「工房探訪おじゃまします!」のはじまりはじまり。

2012年4月17日(月)

旅先は寒に逆戻りで冷え込む夜。淳子さんが用意下さった「ゆたんぽ」を寝具の中に入れ、その懐かしい温かさに足の裏を乗せながら、今日起こった事を忘れないうちに書き留めておこうと、ペンを取っています

今訪れているのは「古殿(ふるどの)」という町です。ギャラリーのある杉並からは、外環道→常磐道→いわき湯本IC→県道14号と、3時間半ドライブしてやってきました。花見の終わった葉桜の東京から北上していくにつれ、満開の花が車窓から見えてきます。そして井丸富夫さん、淳子さん御夫妻が開催しているクラフトハウスに到着したときには、桜は蕾。もう間近と春を待つ木々を眺めました。

グリーンウッドワークとは

井丸さんは、この町の保育所だった施設を再利用した工房で木工作品を制作しています。「グリーンウッドワーク」というイギリス発祥のクラフト運動の工法で、身近な自然の恵みを材料に使うことが出来ます。



写真のテーブルは、工房の直ぐ近くの川沿いに生えていたという「ヒマラヤ杉」から出来ました。町の人々の生活に邪魔な為、役場で伐採したものを校庭に置いてもらったのだそうで、この木からつくられたダイニングテーブルは、天板の長さが4メートルで厚さ15センチもあります。これだけの大きなテーブルがあれば、大勢賑やかに集えることでしょう。(ちなみに腰かけている椅子も作品です。)


そして、こちらが残された切り株。工房からすぐの距離にあります。切り倒した痕とテーブルの両方を観る事ができれば、どうやって木を削り、部屋に運び入れ、組みたてたのだろうかと興味はつきず、話がはずみます

このヒマラヤ杉は伐って直ぐに使うので、生木の状態です。つまり自然乾燥していくうちに歪みやソリが生じることになりますが、材木が動いていく事を予測した設計は、びくともせず、長い時間をかけて使いこんでいけばいくほど、味わい深い生活道具として育っていくのです



又、この「グリーンウッドワーク」では、電気工具を全く使わず、道具も1から手作りします。たとえば器を挽く時には、「足踏みロクロ」というものを使います。左足で踏み込むことによって、ロープが下に向かって引かれ、その力でしなった竹の動力が、今度はロープを上に引き戻します。この運動の中間に器を装着させた棒を取りつけ、ロクロを回転させるのです。



足を使ってロクロを回転させながら、「フック」という刃物(上写真)を手に持ち、器を削っていきます。
器を制作中の井丸富夫さん。


フック自体も手作りです、鍛冶場で作ります。右に見えるのが空気を送る「ふいご」。炉で鉄を軟らかくしたものをトンテンカンテンと叩いていきます。ちなみに左下に引っかかっている道具の数々も、全て手作りなのだそうです。びっくり。    



こうして出来上った器。コーヒーと、奥さまの淳子さん自家製のケーキ。薪ストーブで暖を取りながら頂くのは、とても美味しく、素晴らしい時間でした。
写真に写っている蓋物は完成したばかりの作品で、「ハナの木」という材料から作られました。これから器として使われ、育てられるのを待っています。



                                     濱田始 記


NEXT
グリーンウッドワーク・サイト
ETCに戻る